Vineman -5- ラン篇

ランコースはWindsor高校からワイン畑の中14キロを3周走るコース。
T2から走り出したのがすでに午後5時近く。
気温はまだまだ高く風も無い。

Vineman 25th anniversary 2014

とにかく息が荒い。
なんとか普通のリズムに修正しようと試みるが
ゼェーゼェーという呼吸しかできない。
ガーミンをみるとHRは125程度、問題は心拍数ではない。

まだまだ多くの選手がランコースを走っているが
ボクは1周目を走り出したばかり、他の選手は2周目なのだ。
沿道の市民からもボランティアからも沢山の応援を受けた。

Screen Shot 2014-07-31 at 10.59.05 PM

ほとんどの選手が日焼け対策をぜずに走っている。
中には腕や顔が真っ赤になって既に痛々しい選手もいる。
ボクはエイドステーション毎に氷をトライスーツに放り込む。
ゼッケンベルトが氷をお腹の辺りで止めてくれる。
ゲータレードが用意されているのだが酸が強くて飲めない。

唯一飲めたのが炭酸を抜いたコーラ。
普段は飲まないのだがエイド毎に必ず飲んだ。
ボクにとって高カロリーでカフェインが入った最後の栄養源だった。
とにかく暑すぎてエナジージェルを取る気になれなかった。

ネクタリンとぶどうも甘くて美味しかった。
固形物としてはこの二つの果物が空腹を満たしてくれた。
クッキーやトルティーヤチップもあったのだが手が出せず。

水を飲み始めるときりが無いので、氷の入った紙コップを取り
上部を折って口を閉じて持ったまま走る。
走っている間に解けた水だけを飲むようにする。
これならお腹が水でいっぱいになることも無いし、
冷たい水を次のエイドステーションまで飲み続けられる。

Vineman 25th anniversary 2014

1周目は苦痛しか無い、何度も完走できるのか?と不安になる。
時間内に走れるのかも分からない。
とにかく前に進むことしか考えなかった。
14キロに2時間もかかってしまった。
この調子ではランで6時間はかかるだろう、歩いたら時間切れだ。

Vineman 25th anniversary 2014

2周目からようやく気温が下がり始める。
脚はまだ大丈夫、しかしマメができてきたのか痛みが始まる。
この頃になると別のレースの選手がコースから消える。
先行していた選手達も終わり、残っているのは遅い選手だけだ。
ほとんどの選手が歩いている、走っているのは数人。

マサさんからは「エイドステーションにとどまらないように」と言われていた。
歩いたら気持ちが切れてしまうので、苦しくても走り続ける。

3周目、これで最後の14キロ。
空が暮色に移り変わる。
茜色が空を染め始め、雲が黄金色に輝く。
日没前の最後の光がぶどうの葉を照らしている。
コースにいるボランティアの一人がiPhoneで夕焼け空を撮っている。
ボクは「素晴らしい夕焼けだね!」と声をかける。
彼女は親指をたててくれた。

Vineman 25th anniversary 2014

美しい、楽しいラストラン。
しかしそれも束の間、折り返し地点で日没となりあたりは真っ暗。
街灯も無い田舎道、今夜は月も星も見えない。
最後のチェックポイントにいたボランティアが首に蛍光ネックレスをかけてくれる。

Vineman 25th anniversary 2014

以前参戦したことのある選手は準備よろしくヘッドライトをつけているが
初めての選手は真っ暗の夜道を歩き続けている。
暗闇の中に蛍光ネックレスのぼんやりした明かりと
ヘッドライトの明かり、そしてエイドステーションの明かりだけが見える。

夜になって一口大に切ったソーセージを
焼いて出してくれるエイドステーションがあった。
口に入れてみたがすぐに吐き出す。
疲れていて身体が受け付けない、気持ちが悪くなる。

最後のエイドでぶどうをほおばる。
「そのぶどうが残り2マイルのエネルギー源だよ」とボランティアが言う。
「そうか、あと2マイルか、ありがとう。」

ようやく高校の近くになり街灯の下を走るようになる。
午後10時近くだというのに沿道の応援はまだ続いている。
後ろから誰かの足音が聞こえるが、
自分の足音が反響しているだけなのか定かではない。

スピードをあげることはできたが、あえて同じスピードで走り続ける。
レースを終わりたいという気持ちと、
まだまだ終わりたくないという気持ちが交差する。

高校の入り口に設置された大きなゲートを通り抜け
ゴールまでの直線コースで名前がアナウンスされる。
知り合いなど一人もいないのに声援が聞こえる。

そしてゴール。

やったー!完走

やったー!完走

あっけないほどの終焉。
首に完走メダルをかけてもらい、写真を撮られ
食事が用意されたテーブルに誘導される。

茫然自失wwwwww

茫然自失wwwwww

チキンバーガーが用意されていたが空腹感は無くチキンスープをいただく。
暖かいスープが身体を温めてくれ、他の選手を眺めている時に
ガーミンのスイッチを切っていないことにようやく気がつく。

いくつかの果物を取り、スイムバッグを引き取り
シャトルバスに乗ってスタート地点の町に戻る。
気温はぐんと下がっていて濡れた服のままだったボクは震えが止まらない。
車に戻ってトレーナーを羽織り、30分車を飛ばして
高校へ戻ったのが午後11時55分、バイクをピックアップして
ホテルへ戻ったのが午前12時半。

途中でまだ走り続けているランナーを見かけた。
レースのカットオフタイムは午後11時だったはずだ。
あきらめずに走る選手がいるのだ。

ホテルでシャワーを浴びる、初めてバイクで転倒してできた傷を見た。
血を洗い流したが、バンドエイドも何も無かったので
ティッシュで傷を押さえて血が止まるのを待った。

そして午前1時半就寝。
ようやく長い長い一日が、初めてのフルディスタンスが終わった。

続く

ラン篇の写真はJeff Kapic氏の2014年のレースからのものです。
彼のサイトはwww.jeffkapic.com

あなたの一押しが僕へのはげましです。
にほんブログ村 その他スポーツブログ トライアスロンへ
にほんブログ村

広告

Vineman -5- ラン篇」への2件のフィードバック

  1. もうすっかり、自分がレースしてる気分になり、ゴールの写真とか見ると感動して泣きそうです。笑

    いいね: 1人

    • ははは、本当のレースをやったら泣けますよ。
      耐久系のスポーツってきっとそういうものなんですよね。

      いいね

コメントは受け付けていません。